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正直どうでもいい

こんな名前ですが好きな漫画の感想をかくブログです

[本]農家の常識は社会の非常識?農家エッセイコメディー『百姓貴族』1巻

百姓貴族 (WINGS COMICS)百姓貴族 (WINGS COMICS)
(2009/12/11)
荒川 弘

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   水が無ければ牛乳を飲めばいいのに

「鋼の錬金術師」が完結したよーてことで、レビュー書いてなかった別の作品で更新。
昨年末に新書館から発売された「百姓貴族」の1巻です。ちょっと今更感。
今年完結したハガレンは骨太なストーリーが魅力の少年漫画ですが
こちらはもっとゆるーいノリのエッセイ漫画を単行本化したもの。
しかしよくある日常エッセイやペットエッセイとは違い、本作は農家エッセイ漫画!
というのも、荒川弘先生のご実家は北海道十勝のガチ農家なのですね。
しかも農家エッセイ漫画はこれが日本初・・・とかなんとか。レアな内容を取り扱っています。

曰く、「農家の常識は社会の非常識



日本最北の大地、北海道。どこまでも広大な・・・農場
荒川先生の家は「荒川農園」という超スケールな農園を経営しています。
本州でちんまり暮らしている自分には馴染みの薄い環境が舞台なので、興味深かったです。
日々休まず働き続ける農家の方々の面白話や苦労話を描く本作。
小ネタやうんちくをたくさん交えつつ、農家とは何ぞやということを学べる内容。
そういえば農家の仕事を漠然とイメージはできても、具体的に何をしているのかという詳しい知識は無かったなぁと。無茶苦茶大変そうだけど、凄く楽しそうに生きてるんですねw
農家一丸となって必死になりまくる様子が、見てる分には面白いのです・・・!

20101129232635.jpg

動物相手にマジギレするみなさん。
そりゃ生活かかってますから当然ですよ!

エッセイ漫画なのでかなり雑多な内容となっています。
突然クマに出会った場合の対処法や、野生動物による農作物被害の話。
和牛と国産牛の違いや、牛肉出荷に関するエピソード。(泣く牛もいる・・・とか)
日本の自給率の話題から、もし北海道が独立したら日本どうなるの?な話になったり。
作者の体験談から真面目トークまで、勢いの良いギャグを基盤に進行する作品です。
しかし、中にはシリアスな話題もあります。
生後一度も立ち上がることのできなかった仔牛と獣医さんのエピソード。
やたらと心に残ってしまう、リアルな話でした。
いくつもの命を行く末を見てきても、違和感を覚えながら決断するしかなかった。
命の価値とは何だろう・・・。さらりと深いテーマを描いています。

さてしかし基本はギャグギャグギャグでひたすら突っ切るのが本作!
農業高校での生活を描いたものも非常に面白かったです!
農家となる少年少女が集う農業学校は、普通科高校とは全然違う。

20101129232637.jpg (クリック拡大)

なんでこんなにやること全部激しいのか!!
普通科に通っていた人間なので、かつての自分の日常とあまりにもかけ離れた激ハードな農業学校での日々には驚きつつも笑いが止まらないw
本当に独特のカリキュラムが組まれているものなのですね、なるほど・・・!
たかだか1時間余りで乙女を勇者に変える。農業学校とはそういうものだ。



んではまとめ。
農家のみなさんの日常は一般の自分たちの生活とは大きくかけ離れていて、見ているだけでも新鮮な驚きと笑いがあります。
もちろん、笑うことができるように荒川先生が工夫をしているのですが!
幼少のころから荒川先生が本当にエネルギッシュな日々を送っていたことが分かり
それがあの名作「鋼の錬金術師」を生んだ土台になったのかと思うと面白い。
なにより、これまで自分が深く考えてこなかった農業の現状を知ることができたかも。
農家のみなさん本当御苦労さまです・・・頭が上がりませんね。

20101129232619.jpg

ガチで休み無しの年中働き通しらしいです・・・。

漫画としてのテンポも軽快で、するすると読めてしまいました。
「鋼の連金術師」のギャグが好きな方なら非常にオススメできる作品だと思います。
全編あんなノリです。テンション高めでアグレッシブにキャラが暴れまわるw
ページ右下にはパラパラ漫画(まさかのオチ)も描かれており、遊び心満点な単行本。
世にも珍しい農家エッセイ漫画、気になる方は一読してみてはいかがでしょうか。
同じ作者だからと言ってハガレンと同じような内容を期待するのは間違いですが、
性別を問わず、幅広い層にオススメができる作品だと思います。

『百姓貴族』1巻 ・・・・・・・・・★★★☆
百姓エッセイコメディー漫画。新鮮な笑いを得られる1冊。

[本]最高の大団円。人間が求め、手にした答えと未来とは。『鋼の錬金術師』27巻

どんだけ書いてもなんか物足りない。
鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)鋼の錬金術師 27 (ガンガンコミックス)
(2010/11/22)
荒川 弘

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   おかえりなさい

鋼の錬金術師、完結。
ついに終わってしまいました。感慨深いです。
思えば最初のアニメ第1話を見て原作を買いに走ったので、もう7年以上の付き合いですか。
まぁ、ここで俺の思い出話書き散らしてもしょうがないのですが・・・。
作品としては9年もの長期連載。荒川弘先生本当にお疲れ様でした。
いよいよ最終巻の更新です。長く読んできた作品だけに、本当に寂しいなぁ。
今回結構長くなっております。分割した方が良かったかも。暇な時にどうぞ。



圧倒的な力を見せつける最後のホムンクルス『お父様』。
成す術もなく傷つき、倒れていく仲間たち・・・突破口はどこにあるのか。存在するのか。
けれど絶望はしない。ひたすらに未来を望み、戦い続ける人間たち。
そして一方、既に動けない身体となっていたアルフォンスは決意を固める
それは予想外で最悪で、これ以上ない兄への信頼の成せる最上の決意。
衝撃と怒りがエドを突き動かす!

20101126223844.jpg (クリック拡大)

第1話を彷彿させるこの台詞・・・!
そう、「オレ達」なんですよ。あの頃は違うんだ。覚悟も、背負ってるものも。
ラスボスを真正面から「ド三流」とコキおろしたエド!ラストバトルは如何に・・・!


さて、ストーリー紹介はここまで。
やはり最終巻ですので、自分としても触れたいところはたくさんあるのですが
そのどれもこれもが致命的にネタバレなので、どこまで書くべきか悩みどころ。
とりあえず、これより下は各キャラクターの結末にも関わる話ばかりなので
未読の方は見ないようにしてください。極力。
 

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[本]今、激流の果てに。世界に羽ばたくスゴイオンガク! 『爆麗音』7巻

爆麗音-バクレオン- 7 (ヤングジャンプコミックス)爆麗音-バクレオン- 7 (ヤングジャンプコミックス)
(2010/11/19)
山田 秋太郎

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   音楽は凄い力を持っている!それだけは信じられるのさ!

どうせなら音楽漫画3連続で、というどうでもいいことを考えつつ今日の更新。
先日発売されたこの7巻でついに完結を迎えた「爆麗音」です。
途中から掲載誌が変わってしまって雑誌では追っていなかったので、今回で終了ということを直前まで知らず、ちょっとビックリ。この作品をどうまとめるのかと・・・。
心配しながら読んだわけですが、相変わらずでしたねこの作品は。
というわけで「爆麗音」最終巻について。



ついに誕生した歩夢のバンド、爆麗音。
ライブを控え、メンバーそれぞれが楽曲製作に取り掛かる中
理香子の誘いで訪れた御枷園家で、彼は音無家の人間としてある使命を託される。
理香子の祖父がこの世に残した7つの世界的難曲集「OP.7」。
彼に託された使命は、御枷園家の人間のみが世界初公演を許されるそれの、唯一未発表のままにして最終最大の超難曲「OP.7 ピアノソナタ“零”」を、この世に解き放つこと。
その大きな役割に内心慄きながらも、歩夢は自分なりの表現を模索していく。
そして閃いた、驚くべきその手法。
「OP.7 ピアノソナタ“零”」はもちろんピアノで演奏するもののはず。
しかし彼はそれを―――

20101123221132.jpg

バンドでこの世に解き放つ!
迫るデモンズライブ、課せられた使命・・・プレッシャーはあり得ないほど大きい。
しかし歩夢は、それらにまっすぐ突き進んでいきます。



という感じでちょーっと唐突にまとめに入りだした本作。
まぁこの作品の序盤から長々引っ張ってきた「OP.7 ピアノソナタ“零”」の話題が
やっとこさ物語の表舞台に現れたということで、その高揚感はあります。
バンドとしての結束がどんどん強まってゆく日々の様子も微笑ましい。
加えて、明らかにラストを見据えての展開に入ってきているため
(作中における最後の)ライブでのカタルシスに向けて、がっしりと足元を固めていく流れは
読んでいて期待感煽られまくりで、テンションあげて一気に読み進められました。
この点は、終始この作品の最大の魅力で在り続けたなと思います。
「爆麗音」はとにかく段階的な作中の興奮が分かりやすい。
じわりじわり、しかし時に噴き出すように一気に熱量が増していく。
そして興奮が頂点に達した時の、涙が出そうな恍惚感。
着実に目指していっているような、丁寧が漫画の構成をしていると感じます。
だからもうちょっと物語も丁寧に・・・というのもまた感じてしまう作品であったのですが。
本当に、音楽漫画としての魅力は凄かったのです。

いやしかし、最終巻と言うことで、ライブは凄まじい迫力でしたね。
演奏者が、観客が、会場全体が1つになっている。それ全てが1つの音楽のように。
もちろん演奏者が熱いのは当然と言えば当然なんですが
この作品は観客も熱い熱い。みんな暴動寸前の大暴れ。涙流して狂喜乱舞。
画面いっぱいから歓喜と興奮が溢れだしている。

20101123232907.jpg

最ッ高に楽しそうなんだよな、この漫画の観客は。
漫画としても、読者としては主人公に感情移入しがちですけれど
自分はこの漫画において、客席にいることをイメージにライブシーンを読むことが多い。
無茶苦茶に楽しそうな観客たちを見ると、どうしても思ってしまうよなぁ。
自分もそこに居たいって。
そう思わせてくれるこの作品が、自分が最後まで好きでした。

もちろん歩夢の成長・覚醒にはいつも胸を熱くさせられました。
大舞台に立ち、観客から期待のまなざしで見上げられる彼を1巻時想像できただろうか。
単純に感動してしまったりする。なんだよーカッコよくなりやがって。
期待感を煽りまくって、いつもそれを上回る興奮をもたらして来た歩夢。
彼がこの漫画の読者に届ける最後のライブが、いよいよ始まる。

20101123221056.jpg (クリック拡大)

嵐の前の静寂。
脳が痺れそうな興奮が、もうすぐやってくる。



ではここからネタバレ踏まえた感想とかまとめとか。
最後まで読んで、やっぱり少し消化不良になっちゃったなと思いました。
しかしなにしろ登場人物が非常に多く、それぞれが複雑に絡み合っている作品で
作中目立っていたいざこざはある程度解消させたものの、細かな人間関係の問題などの意味ありげな伏線ともとれた部分の全てを上手くほぐすことはできていないなぁと。
ガンディーニ家の息子達との亀裂、音無家の娘と娘の不仲、梨々子・奈々絵の関係・・・
それと顕君はもうちょっとなんとかならなかったのかーとか。
他にも探せば未解決部分はたくさん出てきそう。
まぁ話を妙に壮大にさせすぎてるのは序盤から感じていたことではあるけれど
そういう所もこの作品の好きな部分でもあった。最後はちゃんとまとめて欲しかったけどw

ラスト、理香子の手が彼女のお腹に添えられたカットで終わるのだけれど
これは、演奏を終えて西洋風の礼をする時の腕を配置を意識しているようにも思えてオシャレ。(読んでくれてありがとうございました、メッセージでしょうね)
それとまぁ深読みっぽいけれど、お腹に新たな生命を宿してるようにも見える。
孕ませよう云々考えてた化け物じーちゃんは今回で渇望を晴らしたわけだし
このラストシーンでそんな黒い意図は流石にないだろうと思うから・・・妄想乙!

いやはや、最初から最後までおかしなスケールの音楽漫画でした。
何度も熱くなりました。足が震えるほどの興奮は、滅多に味わえないです。
ツッコミ所もありますが、歩夢の生きる道はしっかり提示され、かつこの作品らしいどこかぶっ飛んだラストでニヤニヤすることができました。
終始圧倒的熱量を感じる作品でした。なかなかに思い入れ深い作品です。

20101123221115.jpg

超音楽伝説 爆麗音 完了。

『爆麗音』7巻 ・・・・・・・・・★★★☆
完結しました爆麗音。なんといってもテンションあがる漫画でした、お疲れさまでした。

[本]胸に宿る音の温もり・・・人と音が編み出す物語たち。 『ききみみ図鑑』

これから今月末にかけて発売される単行本のラインナップがたまらない。
ききみみ図鑑 (ビームコミックス)ききみみ図鑑 (ビームコミックス)
(2010/11/15)
宮田 紘次

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   僕は、音楽が嫌いだ。

Fellows!にて「真昼に深夜子」連載中の宮田紘次さんの作品。
コミックビーム08年5~12月号に掲載された「ききみみ図鑑」がようやく単行本化。
個人的に凄いピッタリくる漫画を描く作家さんで、本が出てくれて嬉しいです。
ちなみにこの作品で初連載だったようです。
しかしこれまた表紙が好きな感じ・・・!綺麗な色合いですね。
ギター少女が目印のこと単行本、内容も広い意味では音楽漫画です。
様々な「音」をテーマとした、全8話のオムニバス漫画です。
今回はうち4作について。全部取り上げたいけど、それはやり過ぎか。



視える音

最初の作品。表紙はこの作品のキャラクター。『音』は音楽。
主人公は生まれつき「音が視える」特殊体質を持つ学生。
日々そこらじゅうに溢れている耳障りな雑音のせいで、彼はいつも世界がおかしな化け物だらけに見えています。うんざりする毎日のせいで、音楽を嫌ってしまう少年。
かつて1度、美しい音の風景を見たからこそ、彼はここまで捻くれてしまっているのかな。
しかしそんな彼にも転機が。
ある日ふと覗きこんだ教室には、ギターを演奏する女の子が。
その音色は、まるで竜のようだった。

20101121201427.jpg (クリック拡大)

彼女との出会いが、主人公を少しだけ変えることになります。

音がキャラクターっぽくビジュアル化されている作品で、画面が非常に賑やか。
同時に主人公の感じる、その音の凄み等も分かりやすいなぁと思います。
音がグルグルと舞っては厚く積み重なり、竜になり主人公を睨むライブシーンとか
そして24Pというみじかなページ数でしっかりとドラマが広がってからまとまり、先が気になるラストを迎えてくれます。単行本のトップバッターとして完成度の高い短編。

終盤に主人公がかつて心奪われた音の風景が描かれますが、その美しいことと言ったら。
けれど周りからは見えることがおかしいことだと言われ塞ぎこんでしまった。
音楽を嫌ってしまった彼。
けれど、彼は感動を取り戻します。音楽の竜に丸呑みにされてしまいます。
そうだった、音楽ってこんなに楽しいものだったのだ。
音楽への愛に満ちた短編です。エネルギッシュ!

天使の声

4つ目。『音』は声。
エレベーターに閉じ込められた男性と、その相手をする警備員の女性・・・らしき人。
他愛もない世間話から徐々に話題はおかしな方向へ行き
なにやら色っぽいな雰囲気に・・・これがあれですか、噂に聞くテレフォンなんちゃら。
ちょっとコミカルなシチュエーションの短編です。

この作品は男性と女性とで見えているものが違うのが良いですね。
男性は相手の声しか聞けないから、そこから想像によって女性に心魅かれてゆき
女性は全てが分かってはいるんだけど、男性からの接近にちょっと胸ときめいている。
この2人が再び出会う時、どうなるかを想像するのも面白いなぁ。
絶対合わない2人だけど、なんか勢いに任せて上手く行ってしまいそうでもある!
ラスト、ちょっと照れてるマヤ姉さんの横顔が可愛んだー!
ちょっと面白い、けれどちょっと切ないお話でした。

秘密の合言葉

5つ目。『音』は言葉。
主人公・律は上手く女子高の雰囲気に馴染めていない生徒。
彼女と生活指導の立花先生の、心の交流を描いた作品です。

「ごきげんよう(キリッ)」「ごきげんよう(キリッ」→友達同士で下品な爆笑 の冒頭の流れは
リアルな女子高の風景を思わせられて、幻想を抱き続ける俺としては泣けてくるでござる。
主人公である律はそんな周囲の様子に違和感を抱いており、体面だけ取り繕っておけば目は付けられないのにあえて反抗的な態度を取ったりします。
彼女自身、心の奥底では淑女への憧れがあるのかな。
だからこそ現実(リアルな女子高)に抵抗感があるように見えます。
そんな彼女をいつも注意する、生活指導の立花先生。
ある夜、律は立花先生と2人きりになるのですが・・・この時の会話がなぁ、なんとも切ない。
時代は移り変わる。取り残され、少女じゃなくなっていく自分。
大人になる喜びもあれば、寂しさもある。
けれど彼女の眼には一瞬、老いた立花先生がいたずらなまなざしをする少女に見えた。
心に沈んだ、少女の面影。
けれどそれは無くしたわけでは無いのかもしれない。
思い出の中に生き続ける、あの頃の自分がいる。

ノスタルジックな読み心地の短編でした。
立花先生が日々抱えている想いは普遍的なものだと思うし、自分にも経験がある。
なんだか年食っちゃったなと、思ってしまう時はあります。(まだ学生なのにね
だからこそ、130Pにはなんだか勇気が貰えたりするのです。
あと普通に若かりし立花さんがミステリアスかわいい。

そして何と言っても最後!

20101121201429.jpg

よく見ると、閉じた瞼の向こうに涙が潜んでいるようにも見える。
立花先生があいさつにこだわるのは、母校の伝統を重んじているからというのもあるけど
裏で疎まれていようと、生徒たちと心通わせたいという想いもあるのかな。
なんともグッと来るラスト。この単行本では多分一番好きな作品です。

凪の音

8つ目。『音』は無。
トリを飾るシリアスな作品で、結構心が痛くなる内容。
物語のモチーフは明らかに「耳なし芳一」ですが、内容はほとんど違います。

生まれつき盲目で、ついに耳まで失ってしまった芳一。
彼を看病してくれた女性は、いつもはあっけらかんと明るくふるまっているが、彼女にもまた傷はある。母を失い、女であるためになることのできない医者を、必死に目指して勉強している。
今はまだ耳は聞こえる。けれどじきに、聞こえなくなるのは間違いない。
この世に生を受けてから一度も見たことないこの世の中を
彼は耳から得る音の情報で想像し、生きてきた。音が彼の世界そのものだった。
音は彼の全てであり、縋るべき唯一のもの。
それがもうすぐ、永遠に失われてしまう―――

『再生』を描く傷だらけの物語。
胸に突き刺さる痛みの数々は、どれもこれも生っぽくて嫌になる。
無駄な努力を続ける医者志望の女性のひたむきな様子は虚しいし
音を失った芳一の眼の前に広がる広大な闇は、本能的な恐怖を誘われる。
彼が何かに突き動かされるように命を絶とうとするシーンは震えてしまった。
むっちゃくちゃ痛い。熱いもやもやが読んでて腹から爆発しそうな感じ。
彼は本当に全てを失ってしまったように見えるから。
音を失い誇りを失い、もはや死に体の芳一。
しかし女性はそんな彼をしっかり抱きしめる。死にたがる彼を叱りつける。
見えなくても聞こえなくても、確かにここに温もりがあるだろうと。
この足で、この身体で、まだしっかり聞こえるはずなんだ。

20101121201437.jpg

ある日芳一は空を見上げる。そこには、竜。
光は見えないし音は聞こえない。けれど彼は確かに何かを感じ、空を見上げる。
かつての彼の誇り・・・音の姿を捉える能力は、もう失われたはず。
けれど見えているはずだよな、あの竜の姿。見えているはずなんだ。
まだ生きてるんだから。

前向きな気持ちになれます、が・・・色々凄いエネルギーが詰まった作品だなぁ。
ページの隅々から溢れてくる感情たち。絶望、あるいは希望。
最後にこの作品が置かれることで、単行本としてビシッと締まりがあります。
なんというか、読むのに体力が要る作品だなぁ。でも大好きだ。



ではまとめ。
色々な『音』にスポットライトを当てた作品集。
ジャンルも実に幅広く、楽しく読めるのでは無いでしょうか。
自分が特に好きなのは1、4,5,6,8話。しかしどの短編も味わい深いです。
それと紹介しそこねましたのでここに書きますが、宮田紘次先生と言えば女体描写!
ポップでわりとざっくりしたタッチなのですが、何なんでしょうねこの色気は!
体型ももちろんエロいんですけど、本当に「色気」があるんですよね、表情やしぐさに。
宮田紘次さんの活き活きした女の子、好きだなぁ。

20101121201409.jpg

たまらんすな!

あなたが好きな物語と女の子がきっと見つかる一冊です。

『ききみみ図鑑』 ・・・・・・・・・★★★☆
音をテーマにしたオムニバス作品集。色んな音と女の子、そして物語を楽しめます。

[本]加速する青春模様。解き放て音楽の魔法! 『ハレルヤオーバードライブ!』3巻

HOD!.jpg
ハレルヤオーバードライブ! 3 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

   逃げるな。

ゲッサンにて連載中の「ハレルヤオーバードライブ!」3巻が発売されました。
今回この発売に合わせて、ゲッサン本誌では表紙&巻頭、
少年サンデーにてカラー付き特別出張読み切り掲載に加え、
この3巻カバーはリバーシブル仕様で、「ハヤテのごとく!」の畑健二郎先生の描き下ろしイラストがカバー裏に掲載・・・とかなりプッシュされています。
本作の作者・高田先生は畑先生の元アシスタントで、その縁からの今回のコラボでしょうか。
編集部の期待が窺えるというものです。ゲッサンとしてもこの作品を看板に育てたい感じ?
実際プッシュされるだけの、熱い作品だと思います。
それにしてもこの表紙無茶苦茶いいですね。デザイン的では最近の1番のヒットかも!

さてストーリー。
3巻は部長さんの実家でのプチ合宿からスタートです。
技術向上と絆を深めることが目的ですが、しかし小雨と冬夜は相変わらずケンカばかり。
上手くいかない練習・・・迫る「賭け」のタイムリミット・・・
さらに麗が予想外の発言をし、小雨バンド早くも崩壊の危機へ!
さぁ、どうなるプチ合宿!



今回はかなり「恋愛」をクローズアップした展開が増えてきているなと。
これまでややコメディチックに描かれてきた恋愛感情を、ぐっとシリアスにも魅せる方向へと。
かつストーリーの本筋にもかなり絡ませるようになってきているように思えます。
主人公の小雨はずっと恋を原動力にこれまであれこれやってきたいますが、彼だけじゃなく周囲までもが恋愛方面に盛り上がってきたと言いますか、そういう描写が増えた。
より青春漫画らしくなってきたなと思います。いいよいいよー!
特に今回の合宿でも麗は、それを象徴するかのような活躍。

小雨の焦りはどんどん大きくなっていく。
憧れのハルさんは自分に期待してくれているのに、上手く出来ない、前に進めない・・・。
ハルさんを裏切りたくない。期待に応えてみせたい。
しかし一方、愛し小雨の音楽の原動力が、ハル先輩への恋心であるを知った麗。
中睦まじい2人の様子も見てしまい、練習には集中できなくなってしまうなど
普段のしっかりした様子からはちょっと想像できない、脆い姿を見せます。
「自分がどんなに頑張っても、小雨は自分のことを見てはいない」
そうして涙を流す麗に、タンポポ先輩は励ましの言葉を投げかける。
それはタンポポが自分に言い聞かせるための酷な言葉でもあり・・・
バンドの一員としての、そして1人の女の子としての強い想いでもある。
立ち直った麗はパリッと雰囲気が変わって、小雨に厳しい言葉も投げかけたりします。
でもそれは期待をしているから。
彼はやる男だと、信じているから。

20101118225828.jpg

「小雨くんもカッコいいとこ見せて!!」

発破をかけられた小雨。いよいよ主人公の腕の見せ所!



さて、同時に見逃せないのはハルさんの変化。
主人公の2つ年上の幼児体型ヒロイン。ちっちゃい体だけどメタル大好きドラマー。
小雨はことあるごとに彼女へアタックをしますが(冬夜も)、
ハルさんは超鈍感娘で、一向に自分に向けられている好意に気付きません。
しかし、なにやらちょっとずつ彼女も変わっていっているようで・・・?

20101118225816.jpg

小雨とハルさんは別バンドに所属しています。
例え先輩であっても、他のバンドが決めることに口を出すべきではない、のかも・・・
分かってはいても、なんだかちょっと複雑なハル先輩。ようするにスネてる!
恋愛感情ではなくても、これまでのことを考えるとこれは大きな進歩ですよ!
先輩と後輩という関係から、もうちょっとだけ近づきたいとも感じてるのかも?
彼女の性格からして、先はまだまだ長いそうですけどもw

また、小雨を導き、彼がより高みへ羽ばたくための『スイッチ』となるのも彼女。
その事に小雨もハルも気づいていないのもまた面白い。
無意識の2人が生み出す化学反応。

20101118225832.jpg (クリック拡大)

それもまた「音楽の魔法」なのです。



この3巻で各キャラクターの魅力が底上げされましたね。
それぞれのバックボーンがしっかり見えてきて、愛着がわいてきたというか。
今回のプチ合宿編で一皮剥けたというのは強く感じました。
第15話で過去話(1年前)を入ったのも嬉しかったですね。
現メタルりかちゃん結成秘話ということで、非常に高揚感ある内容でした。
しっかしタンポポちゃんかわいいなー!今回の記事では彼女について書けなかったけど、乙女チックで不器用なパンク少女の過去はなかなかグッと来ました。今後はタンポポちゃんがこの作品のラブコメ展開台風の目になる・・・かも?がんばれタンポポ!
しかしこの過去話、もう1つ注目すべき点は

20101118234007.jpg

ハルさんのポニーテール姿だー!
なんぞこれ・・・たまらん・・・!

なんだか女の子の画像しか載せてないですが、この漫画は青春バンド漫画!
もちろん今回も迫力満点の演奏シーンがたっぷりです。
彼らは本当に楽しそうに演奏するんだよなぁ。本気で楽しんでる。
大盛り上がりの見開きページでのタイトルコールは、分かっていても熱くなる!
この作品こういう演出多いんですが、毎回ゾクッとなってしまいますね・・・!
作画も回を増すごとにどんどん洗練されていっていますね。これも見てて楽しめます。
また、この作品は数多くの楽曲が登場します。各話タイトルにも色んな曲が引用されてます。
作中取り上げられた曲を実際に聞いてみるのも、この作品の楽しみの1つかも。

しかし、色々気になる点も出てきましたね。
特に冬夜の兄の存在は、相変わらず意味深。
今回(12話)はっきりと「敵」と断言されましたし、先輩たちとの関係が気になる。
また、第17話でハル先輩は小雨にとある「希望」を譲り渡しますが
彼女が託した「希望」とは何なのかも今後の注目所でしょうか。
小雨に渡したということは、彼が目指すもの・たどり着くであろうものが、ハル先輩の「希望」と重なるのだろう。果たしてなにを願いそれを渡したのか・・・。
今後ますます広がるであろう物語を楽しみにしたいですね。



では短くまとめ。
青春の空気をめいっぱい楽しめる作品になってきたなと思います。
女性キャラがそれぞれゆっくり動きだしてきました。先が楽しみすぎる!
この漫画は音楽漫画であるのと同時に、良質な青春漫画でもあるなと!
キャラも物語もどんどん熱く面白くなってきている作品です。
いやぁ、続きが楽しみですね。小雨の成長も、作品自体の成長も。
なお、現在発売中のゲッサン12月号で3巻のすぐ続きが読めるようになっています。
また少年サンデーでも、現在発売中の51号に、豪華にカラー7Pを含む特別出張読み切りが掲載されています。こちらもチェックするといいかもしれません。カラーは単行本ではモノクロになるし。(上でも書いたのにしつこいですね)

さぁ、いよいよ約束の日。ライブはもう間近。
見せつけろ、音楽の魔法。

『ハレルヤオーバードライブ!』3巻 ・・・・・・・・・★★★☆
今後の期待感うなぎのぼりな第3巻。いよいよバンド本格始動?の前に、ライブだ!

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楽園に花束を

プロフィール

漣

Author:漣
「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

連絡先。
omuraisu0317あっとyahoo.co.jp(あっと→@に)

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基本毎日います。記事にしない漫画感想とかもたまにつぶやいてますので、宜しければどうぞ。

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