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正直どうでもいい

こんな名前ですが好きな漫画の感想をかくブログです

高月かのんキレる 『あげくの果てのカノン』3巻

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米代恭

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   私のことを途中で放り出すなら、結局は奥さんを選ぶなら、
   ずっと神様のままでいてほしかった。


いつもタイトルでポエってるけど印象的なシーンがあったので簡潔に。
先が気になりすぎて月スピ購読も始めてしまったキッカケの「カノン」第3巻。
屈折しながらも純粋で、それゆえに圧倒的な熱量を保ち続ける暴走恋愛漫画です。
いま最も目が離せない不倫恋愛×SF漫画であると言える。他に有るかは不明。

過去の記事はこちら。
炸裂する無垢なる狂気 『あげくの果てのカノン』1巻
一生の恋を確信する瞬間、そして誰かを裏切る。『あげくの果てのカノン』2巻

第2巻ではカノンのライバル(と言えるのかはやや不透明だけれど、ポジション的には)となる、境初穂サイドを掘り下げていく内容でした。
3巻はこれまでい無かった形で、カノンの感情が爆発しまくる。

愛しい愛しい、わたしの神様。
あなたから貰ったのは恋と恋の歓びと、傷と失望と、地獄行きの片道切符。



正しいままで清らかなままで、美しい愛を死ぬまで果たしたいと願う。
けれど人の心は移ろう。崇な正義も変貌する。純粋な愛情も風化する。
間違っていると知ってもなお、過去の自分を裏切ってもなお。
生きていくには、現在進行系の己の感情が放つ声があまりにも大きすぎて
それを全てコントロールしきるには人類はきっと幼すぎる。
間違っていると分かっていても、踏み越えてしまう一線があるのだ。

第12話は先輩本人の本心も垣間見ることができる、夫婦のバックボーンが描写される。これが非常に刺激的。かのんフィルターが濃い目にかけられている本編なので、先輩はいつだってキラキラしているんだけれど、ここで先輩の「生の声」を聞くことができる。結果、やはり先輩はなかなかの曲者で、ぶっちゃけクソ男と言っていい。
けれどここで感じるのは、境先輩の心の傷の深さと、麻痺しきった感覚だ。
「どうせこの気持ちもすぐになくなるのに」と、全てを諦観した言葉が重い。彼の背負う使命もまた。

変わってはいけないと自分を律しても、戦うたびに欠損し、補修され続ければ過去の自分が少しずつ消えていく。自分の役目を全うするごとに、自分が少しずつ狂い出す。
あの頃の僕は、なにを大切にしていただろう。なにを尊く守ろうとしていただろう。
全てを受け止めてくれた妻からの言葉は、呪いとなり彼にのしかかる。
そしてそんな彼だからこそ。かのんの存在を気にかけた。
心の芯から永遠の崇拝を信じ切って、自分を慕ってくれる女の子。
境先輩はどんな思いでかのんの恋を、その狂気的な熱量を感じていたのだろう。

彼女の恋の強度を確かめることで、己の絶望を癒そうとしたのかもしれない。
または、すこし意地悪に、彼女を気持ちを試しているような気もする。
「変わらずにいられる感情なんて、本当にこの世にあるのか?」と。

まぁカノンにとっては先輩は神様なので、この世の全てのなにものと天秤にかけようと、先輩が死ねと言えば死ねてしまう人種なので、狂ってしまいっているので・・・彼女の規格外っぷりを、意外と作中のいろんな人達は測り間違えていく。
十分に狂っている世界と物語なんだけれど、その中においても並の狂い方じゃないぜ、この女の子の恋は。



2巻から引き続く、初穂さんといい弟のヒロくんといい、「報われない側」の人たちが本当にいい働きをしてくれる。彼らが新しい顔をみせるたび、悪意という色素をそっとかのんの心臓に滴らすたび、ゾクゾクしちゃうしストーリーはグングン面白くなるし。
いや「報われない」のは果たして誰なのかという事も思うが。

特に初穂さんの、計算高い魔女っぽいところと、すぐに泣いちゃうメンタルの弱さと、かのんに対しては「強い女」として立ち向かうところも、旦那への複雑な愛情も、研究への熱心さも自己嫌悪もなにからなにまでかわいい。かわいすぎる。
そして今回1番頑張ったと言えるヒロくんもかわいい。悔しそうに涙目になる思春期男子ってのは、もう食欲も増すってもんですわ。
ヒロくんなんて、きっと勝ち目なんてあるわけないと知って、それでもうっかり暴発してしまった。
今回からそんな2人がまさかのコンビ結成の兆しアリ。どうなるんだ・・・!!

そんな魅力的なキャラクターたちに手をひかれ、かのんの物語も熱気が増しまくり。
初穂さんの差し金とはいえ、今回ついにかのんは、神様に対して怒りを露わにする。
神様とその信者としてではなく、ひとりの女がひとりの男に対して、物申す。
そりゃあ、酷いことをされているのは間違いないのだから。
境先輩のせいで涙で目も晴らして、人には言えない恋をして、それでも裏切られ続けているかのん。
けれど怒れるようになったということは大きな変化に違いない。
本心を伝えることで、きっと面倒な女だと思われてしまう。嫌われてしまうかも知れない。それでもあなたを好きだからこそ、言いたいこともある。
もっともっと、私を愛してほしい。全てを捨ててでも、私を選んでほしい。
そんな欲深い本性がかのんの中で膨らんでしまっている。
それを口にして本人にぶつけてしまえるほどに、関係は進化している。
あの境先輩に、ビンタだってカマせる女の子になれました。

雨降って地固まる。激しくぶつかった後は、ご褒美ような、甘い逃避行。
目を細めてしまいそうなキラキラ眩しい幸せな時間。
文学的で美しい描写と演出の妙技がいかんなく発揮されております。
不倫という薄暗い関係でありながら、どうしてこんなに美しく、
それこそまるで儚いおとぎ話のような、憧れを感じる光があるのだろうか。




キャラクターそれぞれにしっかりと血が流れているのを感じる作品。
人物描写がリアルなのにエンタメになってるし、それでいてセリフひとつひとつに熱があって、共有したくなる美しさがあって、恐ろしくもあり憧れもある。
読みやすさと、絶妙な間に深いメッセージを感じるような演出の共存がされているのもたまりません。
ベタ褒めですけど本当にこの作家さんは漫画を描くのがうめぇなと思う。

どんどんとかのんが、”生”の女の子っぽく可愛らしく、エゴも強まり、
それでいて恋が深まるごとに誰かを不幸にして、自分すらも傷つけていく。
切ない世界観と、倫理に訴える必死な恋愛模様のバランスも最高。

3巻表紙、今回もやはり風に飛ばされる傘が登場する。
そして作中でもかのんが傘を持たないまま立ち尽くすシーンがある。
傘を持たぬ女、かのん。そこになんとなく、他の人とは違う生き方を選ぶことができる彼女の本質だったり、その内面の痛ましさだったりが感じられる気がする。

カノン3

世界から許されなくても、その想いを貫けるのだろうか。
変わらないものが、たったひとつでも、この世にはあるのだろうか。

『あげくの果てのかのん』3巻 ・・・・・・・・・★★★★☆
かのんがますますどんどん可愛らしい。雨上がりの夕焼けと呪いのような“I'm Yours”.

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Author:漣
「さざなみ」と読みます。
漫画と邦ロックとゲーム。
好きなのは思春期とかラブコメとか終末。

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